UVプリンタの素晴らしさについてお伝えした記事を先日更新しました。
UVプリンタは素晴らしい工作機械です。私たちのものづくりの可能性を大きく広げてくれます。
が、しかし。もちろん、UVプリンタにも使いづらい点、注意しなければいけない点があります。これらの注意点を知らずに使ってしまうと、思わぬ失敗作が出来てしまったり、やりたいことができなかったりと、せっかくのUVプリンタの長所を生かしきれないまま使ってしまうかもしれません。
UVプリンタの注意点を知って、UVプリンタの長所を100%活用したいですよね。今回はそんなUVプリンタの短所と注意点をまとめました。
Contents
UVプリンタの短所①:UVプリンタは維持費が高い
UVプリンタは購入時のコストこそ他のプリンタとあまり変わらないのですが、維持費が高い傾向にあります。
まずはインク。以前は溶剤インクなどに比べて数倍の値段でしたが、最近は低価格化が進んでいます。にもかかわらず、溶剤インクの相場が220ml7000円程度なのに対して未だにUVインクは220ml10000円弱。割高感は否めません。
高く付くのはインクだけではありません。UVインクは普通の溶剤インク用の洗浄剤に溶解しないので専用の洗浄剤が必要となります。また、噴霧されてミスト状になったインクは紫外線で硬化するため印刷機の細部にこびりついてしまいます。これを掃除するための手間がかかります。そのための人件費なども場合によっては考慮に入れる必要があるでしょう。
さらに、UVローラーおよびUVブランケットなどは専用ゴム材料を使用しています。溶剤インクに使うゴム材料ではUVインクの中に含まれている成分が浸透し、印刷不良やインクの乾燥不良が発生します。ですので、UV専用タイプが必要となります。
UVランプも高価ですので、交換時の出費がかさんでしまいます。
ともあれ、今まで多材質、立体物に印刷するためには多機種の印刷機を揃えなければならなかったこと、版を用意しなくてはならなかったことを思えば、これくらいの出費と労力は小さなものと言うことも出来ます。UVプリンタが得か損かは、その人がUVプリンタでやりたいことによるでしょう。
何をするにせよ、UVプリンタを買う際は、維持費も考慮に入れ、日々のメンテナンスを怠らないようにしてくださいね。
UVプリンタの短所②:ブラックインクが薄い
UVプリンタはインクに紫外線を当てて重合させ、硬化させる印刷法です。つまり、インクの中にまで紫外線をしっかり当てなければインクを硬化させることが難しいのです。UVプリンタはマゼンタ(紅)、シアン(黄)、イエロー(青)、ブラック(黒)の4色を使ってフルカラー印刷をしますが、そのうちマゼンタ、イエローは中まで紫外線を通すためインクがスムースに硬化します。しかし、色は濃ければ濃いほど紫外線のエネルギーを吸収していしまいますから、シアンになるとインク深層が硬化しづらくなり、ブラックでは目に見えて硬化が遅くなります。
ですので、UVインクのブラックはあまり濃くすることが出来ないのです。色に敏感な方の中にはUVインクの黒を見ると、少し薄いような気がする方もいらっしゃるでしょう。その通りで、UVインクのブラックは硬化させるために少し薄くしてあるのです。
ここで、無理に濃くしようとして黒いインクを何層にも重ねるとどうなるでしょうか。厚くなったインクの層の深層には紫外線があまり届かない場所が出来、インク表面が固まっても深層はまだ固まっていないという事態が起こります。
これによって引き起こされるのが裏付き(用紙の裏にインクが浸透してしまうこと)、裏写り(一枚目の印刷が乾ききっていないうちに二枚目を上に載せると、二枚目の裏にインクが付着してしまうこと)、ブロッキング(一枚目のインクが二枚目に裏写りしたまま固まることによって、用紙同士が張り付いてしまうこと)です。インクの硬化不良はこんなに恐ろしいトラブルも引き起こしてしまうのですね。
どうしてもブラックを濃くしたいという場合は、無理をせず数回に分けて印刷しましょう。
UVプリンタの短所③:凹凸のある紙への印刷がしにくい
出典:fabcross
凹凸のある紙は、インクを薄くつけると印刷ムラができてしまいます。ですから、どうしてもきれいに色を載せるためにインクを厚くしがちです。しかしここでも、インクを盛りすぎて紫外線はインクの中まで浸透しなくなり硬化不良を起こしてしまうのです。硬化不良は先述したとおり裏付き・裏写り・ブロッキングを引き起こします。凹凸のある紙に印刷する場合も、数回にわけて印刷するのが良いでしょう。
UVプリンタの短所④:背割れを起こしやすい
出典:トーツヤ・エコー
UVインクは印刷した生地表面に浸透するのではなく、固体として付着しています。また、UVインクの皮膜が硬くて丈夫というのは長所でもあるのですが、変形に弱いという短所でもあります。そのため、生地を折ったり曲げたりした時に背割れを起こしやすいのです。
通常の溶剤インクなら生地のインク受理層にインクが染み込んでいますので、折り曲げてもそれほど背割れは目立ちませんが、UVインクでははっきりと目だってしまいます。
この背割れを回避するのは難しいですので、もともと織ったり曲げたりする生地に印刷する際には、立体にも印刷できるという長所を活かして先に折ったり曲げたりしてから印刷するという方法をとることをおすすめします。
UVプリンタの短所⑤:色がくすみやすく光沢が得にくい
UVインクは印刷後、紫外線にさらされることですぐに固まります。これは乾燥に時間のかかる溶剤インクに比べてのメリットにもなるのですが、すぐ乾くという特性は別の短所を生み出します。UVインクは印刷されてすぐに固まるために印刷時の印刷の凹凸が残りやすいのです。溶剤インクであればゆっくり乾くのでその間に凹凸が慣らされて表面が滑らかになります。
UVインクはその結果、色がくすみ、印刷面の光沢が失われてしまいやすいのです。印刷面の光沢は、透明インクでコーティングすれば解決できますが、色のくすみはどうしようもありません。通常の印刷で使う分には気にならないレベルですが、鮮やかな発色を極限まで追求する必要がある場合には別の印刷方法を検討したほうが良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?UVプリンタは大変便利ですが、一方で気をつけなければならない点もあります。UVプリンタの短所を理解して、落とし穴に気をつけつつ、自由なファブライフを楽しみたいですね!
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